<セッション>

SP-3 [特別シンポジウム]
化学工学分野におけるスタートアップの可能性

<テーマ>

B204  [招待講演] ディープテック・スタートアップ、ディープテック・イノベーション: 日本のチャンスとは?
B206  [招待講演] 21世紀のスタートアップの開拓

<発表者>

B204 Startup Genome Japan 西口尚宏
B206 北大 土屋努

<要旨>

B204 :演者は長年VC(ベンチャーキャピタル)の立場から企業を支援してきた方で、2023年10月からStartup Genome Japanを立ち上げ、スタートアップエコシステムの構築を推進しています。また、一般社団法人Japan Innovation Network発起人の一人であり、JIS Q 56000シリーズ(イノベーション・マネジメント、イノベーション・マネジメントシステム)の原案作成に関わった方です。日本のスタートアップ企業の特徴は、スモールスタートを意識してまず日本市場をターゲットとするが、日本市場は小さく、それ故にニーズとシーズのマッチングの機会が少ないために海外のスタートアップに比べて立ち上がりが遅く、規模が小さいということが課題であり、一貫してスタートアップはグローバルマーケットを狙え!というメッセージを出し続けていました。

B206 :演者は北海道大学の産学・地域協働推進機構の副理事を務め、スタートアップ創出本部長としてスタートアップや地域創生の役割を担っています。また、HSFCという組織(創業支援プラットフォーム)をけん引し、道内の大学等の研究機関から新たな「研究開発型スタートアップ」を創出・育成を行っています。北海道は日本の中では農業・水産業が盛んな地域であり、日本の食料を支えているといっても過言ではありません。このような位置づけは21世紀においても変わらず、スタートアップを増やし“もう一度、北海道を開拓しよう”というメッセージでした。演者は長らく国際金融に携わっていた経験から、B204の発表を聴いた後だったためか、“海外は悪に満ちている”ため、不用意に海外に出ていくべきではないとのメッセージも付け加えていました。

<所感>

ここでは2つの発表を1つのトピックスとして紹介しました。なぜならば、B204の西口氏とB206の土屋氏は、スタートアップ企業の海外展開において真逆と思える主張をしていたからです。西口氏は日本の弱みはグローバル展開でありスタートアップ企業は最初から多様なニーズ・市場規模の大きいグローバルを視野に入れて活動すべきだとのメッセージに対し、土屋氏は日本の大学発のスタートアップは大学の先生が中心となって起業するがビジネスに慣れていないため、そのような状態で海外に出ていくと“海外の猛者”の餌食になるだけなので注意すべきだとのメッセージだったからです。いっけん異なる主張のように思えますが、2つの発表から言えることは、市場規模が小さい日本ではニーズとシーズをマッチさせるのに時間がかかってしまい、また成長速度もゆっくりとなってしまいがちであるためグローバル展開を視野に入れて活動すべきだが、このリワードだけに釣られることなく、“海外は悪に満ちている”ということを肝に銘じてリスクを考えて活動するのがよい、ということではないかと思いました。

<参考情報>

・Startup Genome Japan
https://startupgenome.com/

・北大 産学・地域協働推進寄稿
https://www.mcip.hokudai.ac.jp/

・HSFC
https://hsfc.jp/