<セッション>
SY-65 [反応工学部会シンポジウム]
連続生産を見据えたマイクロ化学プロセス技術(学生賞あり)
<テーマ>
H220 [招待講演]メカノケミストリーで拓く新しい構成化学
<発表者>
北大院工・WPI-ICReDD 久保田浩司*
<要旨>
これまでの有機合成化学は、有機物を溶媒に溶かし溶液状態で反応させることが主流ですが、演者は粉体作成や無機化学などの分野で広く用いられているボールミルを精密有機合成に積極的に適用することで、従来の溶液合成の制約を克服する新しい個体有機合成化学という分野の開拓を目指しています。この手法をメカノケミカル個体有機合成と呼んでいます。この合成法で期待できることは、以下です。
- 化学合成プロセスの省溶媒化(グリーン化)
- 反応の高速化、実験・生産工程の簡便化
- 溶けない化学物の効率的化学変換
演者は、現在までに(1)固体クロスカップリング反応の開発、(2)メカノケミカル固体ラジカル反応の開発、(3)元素単体のメカニカル活性化に基づく有機元素化学の開拓を主たる研究課題として進めており、収率の向上や従来では合成が困難であった反応の実現といった成果を挙げています。
<所感>
機械工学および化学工学を専門とする私にとってメカノケミカルは身近な操作ですが、精密有機合成に適用するという発想はなく興味をもって聴講しました。収率の向上やこれまで困難な反応がメカノケミカルで実現できるのは、ミクロ的にみて個体の反応物質同士が接触面において、ボールミルとの間で発生しる圧力が熱に変換し、個体の分子レベルの凝集(“からみ”)がほぐれ反応が促進するのではないかと思いました。有機溶媒量を大幅に削減できること、反応後に溶媒との分離操作が必要なくなること(簡易になること)のメリットは大きく、今後の脱炭素化の有力なソリューションになるのではないかと感じました。
<参考情報>
・化学反応創成研究拠点(ICReDD)