化学工学会第55回秋季大会(注1)は、2024年9月11~13日の3日間、北海道大学札幌キャンパスとオンラインの併用で開催されました。今回は約2300名が参加、2001年以降の年会・秋季大会で最大の参加者数となったとのことです。

日本の化学工学は、昭和の高度成長の際、石油化学の発展と共に成長しました。産業構造の変化に伴い衰退傾向にあり、対象産業を多角化させて存続している状況で、最近では”化学工学”を学科名として掲げる大学がわずかに残るだけという状況となってしまいました。(ある方は絶滅危惧種の学会とおっしゃっていました。)そのような中で、今回、最大の参加者数となったことは大変喜ばしいことでした。(札幌という魅力的な場所での開催が後押ししたのかもしれませんが)

今回のプログラム一覧(注2)を俯瞰してみると、私は2016年3月の第81年会以来、約8年ぶりの参加であったため“浦島太郎”状態は否めませんが、化学工学の基盤である単位操作を軸足とした部会主催のセッションについては昔も今も変わらないようです。ただ、以前から懇意にさせて頂いている先生のお話によると、対象とする産業や製品・サービスは変わってきており、医療・ヘルスケア、環境にシフトしているとのことでした。シンポジウムのテーマをみても、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといったキーワードが目立っているように思いました。

私の専門領域であるマイクロ化学プロセス技術は、「SY-65 連続生産を見据えたマイクロ化学プロセス技術(学生証あり)」というセッションを継続しており、いまだ健在のようで安心しました。私が関わっていた時は「マイクロ空間×フロー系」という特殊な場での現象の解析や機能発現探索のテーマが多かったですが、現在は産業化に向けた応用研究・技術開発のステージの発表が多いように思えました。(ただし、「やった・できた」だけでなく「なぜの追求」もされている発表なので、やはり学会発表は面白いと思いました。)興味を持った発表は、「H308 スラグ流抽出法を用いた実用的なビール苦味価測定装置の開発」でした。また、招待講演の「H220 メカノケミストリーで拓く新しい合成化学」でした。

それから、あたらしい試みと感じたのは、「SP-3 化学工学分野におけるスタートアップの可能性」というセッションでした。2023年3月の第88年会から始められ今回が4回目であり、国がベンチャー・スタートアップを推進していることを背景に動き出した活動であり、大変興味深い発表が多く面白かったです。

今回は前述したように8年ぶりの参加でしたが、仕事を進めていく上でのトレンドキャッチアップ、そして技術士としての継続研さんといった観点で、今後も年会や秋季大会に継続して参加していきたいと思いました。

*この投稿の後、興味深かった発表についてカテゴリーごとに1~2件の投稿を、“フェイスブックの友だち”を対象に行いたいと思います。

(注1)
化学工学会全体の大会は、3月の年会と9月の秋季大会の年に2回開催されます。

(注2)
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www4.scej.org/meeting/55f/pages/doc/jp_programlist.pdf

*写真はウィリアム・スミス・クラーク像(北海道大学内にて撮影)*
”Boys, be ambitious!”

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